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最高裁判所第二小法廷 平成7年(オ)1468号 判決 1996年10月28日

神奈川県足柄上郡大井町金子一八三九番地二

上告人

産輸システム技販株式会社

右代表者代表取締役

白井秀昭

右訴訟代理人弁護士

及川昭二

山形県鶴岡市大字中野京田字大坪五番地

被上告人

株式会社広田製作所

右代表者代表取締役

廣田豊實

右訴訟代理人弁護士

新長巌

吉永順作

右当事者間の東京高等裁判所平成五年(ネ)第一八五九号意匠権等侵害等差止等請求事件について、同裁判所が平成七年一月二五日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人及川昭二の上告理由について

原審の適法に確定した事実関係の下においては、上告人の本件商品表示が周知性を有するとは認められないなど所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 河合伸一 裁判官 大西勝也 裁判官 根岸重治 裁判官 福田博)

(平成七年(オ)第一四六八号 上告人 産輸システム技販株式会社)

上告代理人及川昭二の上告理由

一、原判決理由は、以下二乃至七に指摘いたすとおりの全体的又は重要判示箇所において審理不十分による事実誤認、経験則違背、理由不備等が発見でき、これはいずれも違法であり、法令の適用を誤っている。よって原判決は取消を免れないものと思料する。

二、まず原判決理由を全体的に総観するに、本件訴訟の審理対象である要件事実、旧不正競争防止法第一条第一項第一号各要件、すなわち商品表示(型態と商標の一体化されたもの)の周知性、彼此表示の類似性、同混同性の存否認定判断に尽きるものであり、それで足り、それに限定さるべきであるのに拘らず、ことさらに次の三、四のような関連事情を大きく取上げ、それによって審理の枠を逸脱、著しく拡張してしまった。控訴審判決の意図奈辺にありやと被控訴人本人は深く疑っている。これが控訴審判決に対する第一の非難である。

三、前記二で指摘した看過できない点の一つであるが、被控訴人と控訴人間の鶴岡簡裁調停和解金未支払の件である。右未払の原因は、控訴人は本件不正競争を控訴人に無断でかくれて惹起したことで控訴人がその責任を感じた余り、被控訴人に請求せずにそのまま放置しておいたことが真実である。被控訴人として特にその支払を拒絶したことなどないのである。しかるに控訴審は、被控訴人が右債務を放置しておきながら本件請求に至っていることを違法不当で許されないではないかとの観点からそのことを本件判断の実質上重要な要素とせしめてしまったところの過誤を犯しているのである。

四、次に控訴審判決は本件製品の開発主導者の点について「クランプ及び被控訴人製品の開発、完成が控訴人の技術力を無視しては実現できなかったこと、白井もこれを十分に認識していたことが認められ」との事実認定をしている。しかしこのような事実認定は第一審及び控訴審の全証拠によっても明らかに独断で誤っており、白井の第一審、控訴審における供述等を曲解すること甚だしいといわざるを得ないものである。

五、控訴審判決は、被控訴人製品、同商標の周知性の存否について、周知性の範囲そのものについて何ら判示することなく控訴人主張を鵜呑みにしたような部分的物理的配布数量のみに偏執しての判断に終っており、この種の判断の従前例に照し全く容認できないところである。この点についての判示は客観的公正な事実判断というよりは意図的先入観的判断の誹りを免れないものである。

六、控訴審判決は、被控訴人製品と控訴人製品の形態の類否判断についても控訴人の主張を認容してその使用者が大工等の専門職であることの観点に立ち「両者の形態が誤認混同される恐れが大きいとすることはできない」と断定している。しかし控訴審判決は両者の類否自体のことについては、判断を意図的に回避している。被控訴人が第一審以来強く主張してきた大工等の建築工事専門家は必ずしも意匠類否判断の専門家でないのであって、本件両製品の形態が非類似とする判断は、両者の現品を対比するに於いて何人も肯定し得ないところであり、その類似判断を回避した控訴審判決は判断の逸脱の誹りを免れないところである。

七、控訴審判決は、被控訴人商標と控訴人商標の類否判断についても前記同様大工専門職を判断基準として否定的判断の誤りを犯している。両者の現品表示が外観、呼称、観念において同一又は同一に近く類似している明白な事実(すべて一致していると判決はいう)に鑑み、判示理由の標題としては「類否」を掲げ乍ら、理由としては類似性を具体的に明言することを回避し「上記一致が両製品の誤認混同のおそれを生じさせる上で大きな力を有することはできない」と判示している。すなわち類似はしているし、また誤認混同もするが、しかしそれは「大きな力を有することはできない」というのであれば、全く舌足らずというしかなく、この点についても理由不備の誹りを免れないものである。

以上

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